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川人早貴の A to Z

A アバウト・タイム
「アバウト・タイム~愛おしい時間について~」。2013年公開のイギリスのSF恋愛映画。過去にタイムトラベルする能力を持った主人公が、その能力を使って自分や家族の人生をより良いものにしようとする話。タイムトラベルできるなら、自分ならもっとうまくやるのに。物語中盤でそう思った。やり直したい過去や無かったことにしたい過去は、やまほどある。「後悔しない生き方を」というけれど、そんなの不可能だし。でも、そういうこのじゃないんだなと見終わってはっとした。今、この時間をちゃんと生きる。ちゃんと楽しんで、悲しんで、怒って、驚いて、それを全部受け止める。すごく難しいし大変だけど。「演劇って、わたしたちが抱く負の感情も昇華してくれるよね」と言う先輩がいた。わたしには演劇があるので、タイムトラベルの能力なんていらないかもしれないなと思う。
B バーレスク
2010年公開のアメリカ映画。歌手になるべく上京してきた主人公はひょんなことからバーレスク・バーを訪れ、そこで開かれる華やかなショーに魅了される。その才能が認められて店一番の歌姫になるまでのサクセスストーリー。仕事に恋に人間関係。悩みは尽きない主人公だけれど、いろいろ悩んで、最後にいきつくのはやっぱり「夢」なんだよな、と思い出させてくれる。
C チャーリーとチョコレート工場
2005年公開のアメリカ映画。世界的なチョコレート工場に招待された子供たちが、工場の中で不思議な体験をする。チョコの包装紙を破いたらその下に特別なチケットがあって、特別な場所に招待される。現実にはそんな特別なことなんて起こらなくて、そんな簡単に特別になれることなんてない。もうずっと前に気付いていることだけど、それでもいつかと期待してしまう自分がいる。運任せにしても特別にはなれないことは分かっているから、今日も特別になるために修行する。
D DEATH NOTE
2003年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、大場つぐみ(原作)・小畑健(作画)の代表作。名前を書かれた人間は必ず死ぬという死神のノートを手に入れた天才高校生・夜神月と、月の野望を阻止しようとする名探偵・Lとの頭脳戦を描く。初めて自分のお小遣いで買った漫画。中学生の頃読んでいて、「なんて文字の多い漫画なんだ」「こんな文字の多い漫画を読んでいるわたしって、もしかして超かっこいい…?」と無事中二病開花。後悔はしていない。
E 栄光のヤキニクロード
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」。クレヨンしんちゃんの映画シリーズの一つで、野原家が夕飯に焼肉を食べるために悪の組織と戦う話。元気が出ないとき、とにかく笑いたいときはこれを見ることにしている。お菓子欲しさにしんちゃんを裏切ってしまうマサオ君、それでも素直に謝れる君のこと、わたしは嫌いじゃないよ。人間ってそうだよな。
F フォレスト・ガンプ
「フォレスト・ガンプ/一期一会」。1994年公開のアメリカ映画。人より少し不器用なフォレスト・ガンプが、人との出会いや別れを経験していく中で成長していくヒューマンドラマ。「人生はチョコレートの箱のようなもの。開けてみないと分からない。」というセリフがある。開けてみて何があるかは分からないけど、とにかく開けてみないと。わたしは彼のようにまっすぐに人を信じるのは無理だと思う。せめて、ひとつひとつの出会いを新鮮に受け止めて生きていきたい。
G ゴジラ
東宝が1954年に公開した特撮怪獣映画「ゴジラ」に始まるシリーズ作品。核実験の副産物として誕生した怪獣・ゴジラが人間の街を破壊していき、人々に恐れられる。小さい頃見たゴジラは、わたしにとっても確かに恐怖の対象だった。でも、最近ゴジラの映画を見て、ゴジラはただ移動しているだけで、破壊しようという意図はないらしいという描写があった。人間の都合で生まれて、人間の都合で駆逐されようとしているなんて!かわいそう!最近ではゴジラへの見方もちょっと変わってきて、キャラクターとしてかわいいなとさえ思えるようになってきた。これが大人になるということか。
H 鋼の錬金術師
2001年から「月刊少年ガンガン」で連載されていたダークファンタジー冒険漫画。錬金術師の禁忌を犯しそれぞれ身体の一部を失った錬金術師の兄弟が、失った身体を取り戻すために「賢者の石」を探して全国を旅する話。わたしの青春を支えてくれた漫画の一つ。物語から得た教訓はとても多かったけれど、それ以上にたくさんの友達と出会わせてくれた作品でもある。「ハガレン知ってる?わたしも!おもしろいよねえ」と、休み時間に話したことが懐かしい。最終話が連載された雑誌を買うために友達と情報交換して、何軒か本屋をはしごして手に入れたりもした。
I 犬夜叉
1996年から「週刊少年サンデー」で連載されたファンタジーバトル漫画。現代から戦国時代にタイムスリップしてしまった主人公・かごめが、半妖の少年・犬夜叉と協力して「四魂のかけら」を集めて旅をする。小学生のころ、ピアノの発表会で犬夜叉のテーマ曲を演奏したことがある。自分より小さい子とペアを組んで、連弾のような形で演奏した。当時はピアノ教室に行くのがいやでいやでしょうがなかったのだけれど、わたしのとなりで泣きじゃくる小さい女の子を見て「わたしがしっかりしないと」とお姉さんとしての自覚みたいなものが芽生えた。「責任感」なんて難しい言葉は分からなかったけど、わたしが「お姉さん」になれたのはこの発表会があったからだと思っている。
J 重力ピエロ
伊坂幸太郎の小説。仙台で連続放火事件が起こる。事件現場に残されたグラフィティアートに隠された謎を解くべく動き出す兄弟の話。「春が二階から落ちてきた」という書き出しを読んで、なんてきれいな文章なんだと思った。映画で二階から飛び降りる春役の岡田将生を見て、なんてきれいな俳優なんだろうと思った。それ以来、わたしは伊坂幸太郎と岡田将生のファンを続けている。
K 樹木希林
このリストを作るとき、「物語のあるもの」を縛りとして考えて、漫画や映画やアニメを羅列してきたのだけど、これだけはどうしても外せないというものが何個かあって、樹木希林さんもそのひとつ。きれいな姿だけではなくて、「生きた人間」をありのまま表現できる稀有な女優だと思っている。どうしようもないくらい人が好きで、関わり続けて、表現し続けたその姿が好き。わたしにはできない、という思いはありつつも、いつかこうなりたいとわたしの心に永遠に棲みつづける怪優。
L ラ・ラ・ランド
2016年公開のアメリカ映画。女優志望とピアニスト志望の夢追う二人が恋に落ちる。そんな二人の夢と現実の狭間で揺れる心の葛藤を軽快な音楽にのせたミュージカル映画。夢だなんだというけれど、そのために何か諦めなければならない局面ってきっとある。それでも進んでいけるなら、その選択が本当によかったのかと悩み続けながら生きていきたいなあ。
M メロメロたち
2016年に上演され、OMS戯曲賞も受賞した悪い芝居vol.18『メロメロたち』。伝説のロックバンド「メロメロ」のボーカルが死に、日本の東西内戦は終戦した。終戦から5年、彼に関わった人達が、彼を知らずに生きてきた人達が命を燃やして前に進もうとする生き様を描く。わたしを悪い芝居と出会わせてくれた作品。なにがどうとか上手く説明できないまま、ただひたすらに泣いた。説明できないのが悔しくて、台本とパンフレットとCDを買って、それを家で読み返してまた泣いた。一瞬で好きになった。わたしの悪い芝居への初恋がこの時だったんだと思う。
N NARUTO
1999年から「週刊少年ジャンプ」で連載されていた、日本を代表する忍者漫画。体内に九尾の妖狐を封印された落ちこぼれの忍者・ナルトが、火影になる夢を叶えるため仲間と試練を乗り越えていく成長物語。小学生の頃、「忍者走り」という走法が流行った。上半身をかがめて、両腕を後ろにまっすぐ伸ばして走る忍者特有の走り方だ。田んぼのあぜ道を「修行道」と呼んで忍者走りで疾走し、写輪眼で敵を察知して螺旋丸で撃退する。忍者として見えない敵と戦っていた小学生時代、結局敵は殲滅できなかったし火影にもなれなかった。
O おっさんズラブ
2016年からテレビ朝日系で放送されたドラマ。お人よしで情にあつい、でも少しおっちょこちょいな独身サラリーマン・春田が周りの“おっさん”からモテにモテまくる新感覚ラブストーリー。わたしはいわゆる腐女子というやつで、その特性は隠して生きていくものだと思っていた。でもこのドラマが放送されるのを見て「こんな大胆に!地上波で!アニメじゃなく!人気俳優たちが!」と目ん玉飛び出しそうになった。自分の好きなものは、あけすけに表明しないまでも隠すことではないのだな、と気付かせてくれた。はるたん尊い。
P プロメア
2019年に公開されたTRIGGER制作の映画。炎を操る新人類・バーニッシュによる世界規模の大火災に挑む特別救命消防隊・バーニングレスキューの話。主人公にも悪役にもそれぞれの「正義」があって、それゆえの対立があることを教えてくれた。登場人物ひとりひとりに共感と愛をもって向き合えた。最初から最後までめちゃくちゃ面白くて、目が離せなくて、見終わった後急いで映画館のトイレに駆け込んだ。自分の尿意にも気付かないほど夢中になった映画。
Q Qoo
ソフトドリンク界の巨匠。アップルが好き。最近はなかなか自販機に並んでなくて悲しい。Kの項で説明したように、わたしのA to Zのテーマは「物語」だ。Qで始まる漫画やアニメや映画や小説、なんかあったかな、と考えてみた。……なくね?ゆえに、ここで挙げた「Qoo」はだいぶ苦肉の策なわけだ。誰か、頭文字がQの物語で、人生を変えるような何かをご存知でしたら教えてください。お願いします。(切実)
R ロボとーちゃん
「クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん」。改造されてロボットになったヒロシが、自分の本当の身体を取り戻すために家族と敵に立ち向かう話。お父さんに会いたくなる映画。「母は強し」とはよく言うけれど、父親には父親の愛や絆の形がある。わたしにも人並みに反抗期があって、「お父さんの服と一緒に洗濯しないで」とか「お父さんが運転するなら助手席乗りたくない」とか言ってた時期もあった。そのことを今素直に謝るのはやっぱりちょっと恥ずかしいので、「いつもありがとう」とかわりに伝えてみようと思う。
S スタート!
大学生の頃、学生演劇の世界に足を踏み入れた時に初めて取り組んだ演目。当時3回生だった先輩の創作戯曲で、テレビ業界でドラマ作りに携わるいろいろな職種の人が出てくる。演劇とは、何かを作るとはどういうことか、わたしに考えるきかっかけをくれた作品。この時先輩や同期とこの作品に向き合った体験は、わたしの演劇への原体験だと思っている。ここからわたしの演劇はスタートした。
T 冷たい校舎の時は止まる
辻村深月の小説。ある日突然学校に閉じ込められた男女。その密室の中で一人また一人と仲間が消えていく。消えた仲間を探すために、ここから脱出するために、主人公たちが謎を解いていく話。高校生の頃の私に寄り添ってくれた作品。この時、辻村深月さんの作品に出会えて本当に良かったと思う。決して助けてくれるわけではないけれど、「そのままのあなたでいいんだよ」「一人じゃないよ」と寄り添ってくれる作品だと思う。
U 有頂天家族
森見登美彦の小説。京都を舞台に、たぬきを食べたい人間と、食べられたくないたぬきの攻防を描く。立命館大学に入学して香川からはるばる京都に出てきたのが2014年、19歳の時だった。せっかくだたら、京都が舞台の物語に触れたいと手に取ったのがこの本だった。森見登美彦の小説がなかったら、京都をいまの3分の2くらいしか楽しめてなかったんじゃないかな、と思う。もしかしたら本当にこの物語みたいな世界があって、いま隣を歩いている人もたぬきかも。そう思わせるような不思議な雰囲気が京都にはある。
V ヴェニスの商人
シェイクスピアの代表作の一つ。主人公・バサーニオは愛する人と結婚するため借金をする。借金のカタとして肉1ポンドを要求されるが、裁判の結果その要求は不当であるとされ、バサーニオは愛する人と結ばれる。高校生の頃、「芸術鑑賞」という授業の一環で、市民ホールで観劇した演劇の演目。当時のわたしは高校演劇の世界しか知らなくて、「大人になっても演劇を続けている人っているんだ」と感激した。それから約10年、まさか自分が演劇を続けることになるとは思いもしなかった。
W 悪い芝居
2016年入団した、わたしの劇団。昨年まで悪い芝居のホームページのメンバー個人ページにはには「○○○○のあいうえお」というのがあって、各メンバーが自分を構成するものを50音順で紹介していっていた。「わ」の項で他のメンバーが「悪い芝居」を挙げる中、わたしが挙げたのは「わたしが一番きれいだったとき」。茨木のり子の詩だ。2016年の入団当初、悪い芝居はまだわたしにとっては憧れで、わたしの構成要素にはない得なかったんだろうか。あんまり覚えてないけど。でも、今は胸を張って言える。悪い芝居はわたしの劇団で、大好きで、わたしが帰ってこられる場所です。これからもよろしく。
X xxxHOLiC
2003年から「別冊少年マガジン」で連載されていたCLAMPの漫画。妖に好かれやすい主人公・四月一日君尋が怪しい店の女主人・壱原侑子とともに様々な怪事件を解決していくオカルト漫画。妖とか幽霊とかパラレルワールドとか、そういうオカルトをわたしはわりと信じている。人間の力ではどうすることもできないもの・説明できないものって確かにあると思っていて、というのも、わたしがポルターガイスト現象に悩まされていた時期があったからなんだけど。いつか、侑子さんみたいな人が現れて全部解決してくれるんじゃないかなと、あの時は本当に期待していた。
Y 八日目の蝉
角田光代の小説。不倫相手の娘を誘拐し、この子の母親として生きようとする女性の逃亡劇と、成長した娘の心の葛藤を描く。「母性」にフォーカスした作品で、見終わった後お母さんに会いたくなる。この年齢になって、「娘」から「母」の視点で考えることが多くなった実感がある。いつか、わたしが誰かの母親になったとして、お母さんのようにいられるのかな、とか。お母さん、いつもありがとう。もうしばらくは娘のままでいさせてください。
Z ズートピア
2016年公開のディズニー映画。田舎町に暮らすウサギの少女・ジュディは警察官になることを夢見て上京する。そこで受け持つことになったのは動物の連続失踪事件。キツネのニックとタッグを組んで事件の謎に迫っていく。ニックがジュディを抱きしめて、「しょうがないなあ。本当に頑張るんだから。」と慰めるシーンがある。最高だ。ニックに恋するには十分すぎるシーンだった。誰かに「頑張ったね。大丈夫だよ」って慰めてほしいときはたまにやってくる。そういうときは心の中のニックに「本当に頑張るんだから。」と慰めてもらうことにしている。そうしたら、また頑張れる。

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photo by bozzo