『罠々』特別座談会 第三弾



『罠々』特別座談会 第三弾
刻一刻とお披露目の日が近づいてきた、悪い芝居最新作『罠々』。
稽古も佳境に入る中、初日に向けての出演者座談会を決行!
第三弾はゲストのお二人に加え、主演の渡邊りょう、音楽の岡田太郎、
そして作・演出の山崎彬の5人で、作品に迫る!
ネタバレ注意です。

















渡邊 罠々についていろいろ話したいんですけども、

山崎 はい

渡邊 客演さんお二方、悪い芝居に参加してみてどうですか? 石塚さんは二回目ですけれど。

石塚 前回観てくれた方が、ね、もう「わけの分からんもの観してもらったー!」って言ってくださって、それが私すごく嬉しかったので、今回もわけの分からんこといっぱいして、ビックリさせたいなと思いますね。

山崎 稽古場の臨み方、というか、そういったあたり一回目とちがうことってある?

石塚 どうだろうな…やっぱり一度共演してる悪い芝居メンバーの方も多かったりするので、心を許しあえてる部分はありますかね。けど、だからこそ、まだまだどんどんどんどんやってみなくちゃっていう思いも、強く持ってる気がします。

渡邊 それは僕らもすごく感じます。稽古を見てても。

山崎 感じますね。前回の体当たり感も良かったけど、今回は、何て言うんだろ、本当に役者だなって思いますね。すごくすごく刺激をもらってますね。

石塚 ありがとうございます…。

一同 (照れ笑い)

渡邊 緒方さん、今回初悪い芝居ですよね

緒方 そうですよ。

山崎 観ては頂いてましたもんね?

緒方 一度だけ。かなり前に。や、そん時観た印象は、山崎くん面白いこと考えるなぁと思って観てて。そっからね、何回かお声がけはしてもらってて。

渡邊 あぁ、そうだったんですね。

緒方 実はね。それでまあ、僕もタイミングおうたんで参加させてもらったんですけど……、やっぱそりゃもうね、怖いですよ。

一同 (笑)

岡田 怖い?

緒方 やっぱりね、初めて参加するっていう、その空気感も分からないし。それと表現の仕方が、僕がここ10年くらいやってきたお芝居とは全く違うから、戸惑いもあるし。元々、言われたことをかみ砕いて消化して表現に変えていくまでに、僕は時間がかかるタイプやから、余計に。周りの若い人見ると、スポンジみたいにキュッキュキュッキュ吸っていくからさ……お前らパッと聞いてパッとやるのやめてくれよ! って思ってます。

山崎 緒方さんのスポンジはもう何も吸わなくなってますか?(笑)

緒方 もう、びっちょびちょの汚い雑巾みたいなおっさんや。

一同 (爆笑)

緒方 これ以上もう吸われへんで。

山崎 じゃあ1回しぼってもらって。

緒方 1回……だけね。まあ、今回こうやって参加するにはさ、自分の武器で使えるものと使われへんもんあるけど、表現ていうことに関しては一緒やし。僕は、山崎くんの世界観がすごい面白いと思ってるから、だからこそ山崎丸に乗ってね、山崎くんの求めてるものを自分なりに一生懸命やろうかな思ってます。でも、それと同時に言わせてもらうと……、僕の芝居観てオファーくれて、お前こういう感じの役ふるか!? 全然違うやん! 俺やってるのと!

一同 (笑)

山崎 いやいや、緒方さんの出演作を観てて、「お前、こんな役やらすか!?」って言われたいのは多少はありましたけど(笑)、でもシンプルに、緒方さんを知ってる方がビックリするような役をやってもらいたいなと思って。

緒方 ホンマやでこれ。

山崎 だけど僕の中の緒方さんのイメージ、なんか、人間としての魅力の部分は、乗せられてるかなあ、と。緒方さんだからこそ、やってもらいたい役になったとは書いてみて思いました。

緒方 うん。せやから僕のやらせてもらう天田甘玉っていう役がね、この世界観の中で、何を思って生きてきたのかを考えて、その中に沈んでるものが何なんだろう、っていうのを今探していて。つまりは、何が書かれてる作品なんかなっていうところですけど、なぜこの行動をする人なのかっていうのをやっぱり僕は演じたいっていうか。

山崎 うん。

緒方 やっぱその、テンポ、見せ方とか色々、もちろん大事やし、だけど、そればっかりに頼ってしまうと、役の内面とかで使えるものが、僕は不器用だから減ってきちゃうんです。で、その辺をいいバランスで見せることが僕は出来ないから、だから、今稽古しててね、普通におる感じではおるけども……もう相当凹んどるからね俺!

一同 (笑)

石塚 そうなんですか!?(笑)

緒方 相当凹んでる。もう、逃げ出したい。もう、東京の嫁の顔見に行きたい!

一同 (笑)

山崎 いやあ、それはいいことですね!

緒方 相当逃げ出したい。でも、この相当逃げ出したいっていう今のこの気持ちが、僕の演じる甘玉と何か繋がったらいいなぁと思ってる。甘玉ってのは逃げ出したい中で踏ん張ってる役やから、ここでやりきることが、それが今の僕を通して出来たらいいなって思ってる。

山崎 わかります。わかります。

緒方 僕は俳優なんてもんは、実際にその役にはなりきれないって思ってんの。

山崎 僕もそう思います。

緒方 思いを馳せることしか出来ない。その役にね。

山崎 他人を思うことに似てますよね。

緒方 自分の人生経験の中で何が使えるかっていうことだから。そこから思いを馳せてやるしかできないから。僕は極論役者なんてもんは2、3色しか出来へんと思ってて。その中で山崎くんが言った通り、僕の中で使えるもんがあると思ってこの役を振ってくれたのは、確かに感じるところがある。

山崎 はい。

緒方 今はまだ迷ったりとか、手探りな部分とかあるけど、もう山崎丸の山崎船長を頼りに、信じたいと思ってます。

山崎 先ほど緒方さんが「今凹んでるけど、でもやったるぞしかないっていうのが、甘玉という役と何か重なるものがある気がする」と言ってくださったように、登場人物とその物語世界との関係が、俳優とその役や物語世界に対する関係と近くなってる時って、絶対にいい方向に向かうと思っていて。

緒方 うん。

山崎 例えば、気が狂いそうになるっていう役をやると、本当にその俳優さんも普段からそういう感覚になったりだとか、何もかもポジティブに捉える役をやってる時に、その俳優さんが生活しててもポジティブになるだとか。僕の作品の場合だけかもしれないですけど、そういう場合、役者さんの演技も、元々物語が持ってた力や演出で引き出される力なんかを踏み台にして予想以上に跳ねることが多いんです。緒方さん40…?

緒方 45です。

山崎 45にして、もうひと跳ねをしていただこうかと(笑)

緒方 したい! 膝の軟骨あれへんけど!

一同 (笑)

山崎 ジャンプできひんかもしれないけど!

緒方 ちょっと浮きたいよ!

山崎 良い傾向だと思ってもらっていいですよ、むしろ。僕としても10歳以上も年上の俳優さんに多いに悩んでもらってるっていうのは有難いです。僕という他人が書いただけじゃなくて、僕自身も分からないもの書いているので、悩まないわけがないんです。僕も分からないけど、きっと何かがあるから、ここに言葉が、物語が生まれてるわけだから、その奥にあるものを一緒に探してもらえるっていうのは、うれしい。

緒方 あんちゅちゃんのシーンでさ、他の仕事で稽古ちょっと離れてて、で久々に戻ってきて見た時、なんちゅー角度で良くなってんねん!と思って、僕は思わず、むっちゃエエよって…、

石塚 言ってくれましたね。沈んだものがあったねーって言ってくださって。

山崎 今回あんちゅには、「メロメロたち」と同じ立ち向かい方じゃモノにできない役をやってもらいたくて。稽古が始まった時に、そのやり方やったらこの役は出来ない、そんなんじゃ弱いしおもんないってストレートに言って。「はい」ってあんちゅは答えて、どういうことやってきたのたかは分からんけど「あ、これじゃダメだな」って何か弾けてから、グンとよくなって。石塚さんの何が潔いかって、私はヘタクソなんでやるしかないんでっていう開き直れるところ。できない辛さも内包して戦えるから、シンプルに伸びる。あたし伸びしろあるな、と思ってやるもんじゃないだろうけど、どんなこと感じてやってますか?

石塚 どんなこと感じてるかなぁ…。

渡邊 前回と今回の違いみたいなものだったりとかってあったりします?

石塚 どうだろう。前回と一緒ですごい手探りですし、私演劇なんも分かんないから、とりあえず言われたものは全部、自分の袋に詰め込んで、それをどう食べていくか、みたいな感じなので。

渡邊 あんちゅってどんな役作りしてんのかって、すごい気になる。どんな役作りをしてるの?

石塚 私は、ギュッてなってるのが好きなので、こう、マフラーとかで自分をグルグル巻きにしてる状態が一番いい状態なので、そうなって、役のこと考えてます。

渡邊 そうすると集中できる、みたいな?

石塚 一番、下がってる時が好きなので、私はその状態になって考えます。

山崎 役に色々、思いを馳せる時?

石塚 うん。

山崎 こういうことをしたら、こういう効果があるからとかじゃなくて、多分本当に、役に恋してる、みたいな、役のことを家で思ってきて、それを稽古場でベェッて出してるって感じ?

石塚 あーそんな感じ!

山崎 確かに、いい意味で考えてはないんだろうな、と思う。感じてるというか、鼻がいい人だな、と思う。今は花粉で鼻詰まってるけど。(笑)

一同 (笑)

緒方 僕、すげーね、思いだしたんよ。このお芝居に取り組んでる中で、難しいとか分かんないとか照れが出てきたりとかで、体も心もすごくギュッとなったんやけど、みんなの芝居を稽古で見てて、俺も20代で芝居を誰にも教えてもろてないころの、芝居始めた時のこと思い出して、みんな楽しそうにキャッキャキャッキャやってるやないか、それ見て、あぁこれでいいんだと思って。自分が思ったままのことをやれば、山崎くんが整理してくれるのが見てて分かったから。素敵だなと思って。僕もずっとやってきたから、やりたい方向の芝居もあるからさ。

山崎 はい。

緒方 でもそうじゃなくて、俺こいつらに混じろうと思って。一人だけ足の遅いひげもじゃのおっさんおる! あいつだけ若ないやん!て言われたとしても、全力で、楽しもうっていうのは思って。そっからちょっと軽くなったんやけど。

山崎 ええ。

緒方 原石なのみんな。ピッカピカに輝いてて。それに触れる機会ってのは僕も最近なかったから、モノ作ってるなって感じがするし、忘れてたような感覚みたいなものが甦ってきたっていうかね。稽古場でもう晒すしかないから出来へんのやったら晒していこうと思ってる。

山崎 一番年長の人と一番年少の人が晒してたら、メンバーは晒さずにいられんやろって話になってくるんで、いいことだと思う。こうだって決めきっちゃうってことが通用しないというか、僕が書く作品は、決めてやればやるほど出来なくなるっていうような作品だったりするので、一緒になって模索して探してもらえるのはすごくありがたい。一人で考えるよりね、10何人で考えた方が絶対面白いものできるんで、すごく助かってますね。………という長い話を、延々と聞いてて…。

渡邊 太郎ちゃん、今何を考えてるんですか? お腹減った?

一同 (笑)

岡田 あ~、ちょっと。

渡邊 今回役者では参加せずに音楽だけで参加してて、序盤は稽古場にあんまいなかったわけじゃん。で、本格的に音楽持ってきて参加した時に、どんな感じだった?

岡田 うーん、ほんまにみんなで作ってる感じがしたので、みんな見てたら、勝手に音は出てきたかな。

一同 ………(笑)。

山崎 間、からの、爆笑。

緒方 ちょ、何今の~!!(笑) 絶対、昨日から考えてきたコメントちゃうか、太郎ちゃんそれ~!

岡田 そんなことない、そんなことない(笑)

山崎 いつも太郎はこんな感じで(笑)

緒方 かっこええな~なんか~。

山崎 で、それってどういうことって聞いたら、特に意味はないっていう(笑)

岡田 いや! そんなことない、そんなことない!

渡邊 すぐ顔赤くなる。

岡田 いや、前回の『メロメロたち』のバンドが出す音に比べたら、今回はほんま、この街のこの人らが生活してる、息づいてるとこに聞こえてくる音を鳴らしてる感じなんです。

山崎 そういう感じは作ってもらってる気がする。

岡田 普段、喋ってる時とかってBGM鳴らないじゃないですか。でも、舞台では鳴ってる。それは、すでにリアルじゃない。でもそうやって音と一緒に観るっていうことは、つまり鳴らなかった音もあるし、これから鳴っていく音もあるし、音にならなかったものもあると思っていて、ただ今回むちゃくちゃ多いんですよね。音になりえるものが

山崎 そうだね。太郎は今回出ないしバンドもないから、とにかく出ないで前から見れるっていうのもあって色々自由やから、ずっと鳴ってるぐらいのつもりで、鳴ってないところも鳴ってるつもりでやろうってのは話していて。本を書きながらも音楽はずっと鳴ってるイメージはしてたんですけど、鳴らしてみて、ずっと鳴っててもうるさくない。なんだろうな、邪魔してないっていうか、当然のように鳴ってて、しかも鳴ってなくも感じるみたいな、不思議な感じ。今回、あんまり、いや~その音違うなあ、っていうのはない。

渡邊 あんまり聞かないですね、僕らも。

山崎 それは長年やってたっていうのもあるとは思うんだけど、太郎くんがここ三作で役者をやったことによって、台本から読み解く力が絶対上がってると思った。

岡田 うん。

山崎 打ち合わせ、まったくしてないもん。

岡田 してないっす。

山崎 ほぼ、一切。参考資料だとか、こういう方針でみたいなのぐらいははじめに話して、あとは自由。役者さんが、役のことを自分で考えてきて、稽古でブラッシュアップしてゆく。そういう感じで、太郎も音楽っていう役があってみたいな、俳優と近い感覚。

岡田 20ページくらいまでは、俺、ト書きの音楽っていうの意識してたんですけど、今もう意識してないです(笑)

渡邊 石塚さんと緒方さんの今回の見どころみたいなのをあげるとすればなんでしょうか?

山崎 すごく書かせて頂いている感じがすごくあって、二人の人間としての面白さに引っ張られて。まず緒方さんでいうと、一人でど真ん中に立って役として晒されるシーン。(笑)

一同 (笑)

山崎 あんちゅでいうと、舞台を役として駆け回る姿そのものですね。見た目は当然、緒方さんがおっさんで、あんちゅが女の子なんですけど、芝居の見どころとしては、緒方さんが可愛くてあんちゅの方がオラオラオラ~みたいな、そのあべこべ具合がすごく面白い。

渡邊 良いコンビですよね

緒方 僕ね、あんちゅちゃんは、すごいなって思ってね。ちょっと話変わるかもしれないけど、アイドルの人や芸能人の人、色々あったらニュースになったりするやん。でもみんな同じ人間やから間違うこともあるやんか。みんな一生懸命生きてるわけやんか。でも、その一面でしか見えてないやん。アイドルのあんちゅちゃんが自分の主戦場じゃない舞台に出てきて、ポンと立って掻き分けて前に進んでっていう、すごく厳しい世界でやってきたものが、乗ったような気がしたんよ。

山崎 それは、すごいありますね。

緒方 あんちゅちゃんのそういう覚悟っていうか、人から見られる商売をしてて、いうたらアイドルなんて厳しい世界やん、すごく。その中で戦ってて、これで自分の好きな舞台をやってる、そういうのが、多分、乗ったんよね。

山崎 役に乗った?

緒方 そう。稽古の始めのころは、あんちゅちゃんの華だけやったんやけど、そこにそういうものが乗って。僕は素敵やなと思って。それはあんちゅちゃんが自覚してそれを乗っけようとなんか思ってなくてええの、全く。だから、彼女は彼女なりのやり方でやればええと思うし、圧倒的な華があるしね。山崎くんの本から、多分、みんなが嗅ぎ分けてね乗っかってくる。そこが面白い。

山崎 僕は役者やる時も、本に全部書かれてると思ってるんです。だから分からん時は役のことを本当に誠実に思って読み直せば、絶対うまくいく。あんちゅが役のことを、稽古を重ねる中で理解していったのと同時に、理解できないことも愛せるようになってきたというか。それは、もう本当に人のことを誠実に思う行為と一緒だなって。理解できる部分も好きだし理解出来ない部分も想像したいっていうのは、人を好きになることと近いことだと思うんです。それをちゃんとやったらうまくいくような、物語だったり言葉を書くように心がけてはいます。なので、シーンの展開は決まってても、役や役者を本当の意味で愛せるまではセリフを書けないんです。本当の台本のセリフ。だから本当に書かせて頂いてるっていうのは、謙遜でも良く思われたいとかでもなく、役者が書かせてくれてると心から思う。

緒方 本当ね…、山崎君は半々の男やな思うわけ。

渡邊 何がですか?

緒方 昭和的な男の要素半分、今の現代的な男の要素半分。男でもあり、女っぽいところもある。軽くもあり、真面目でもある。なんか…山崎くんの書く…例えばね、ネオYouTuber鉈出孤子っていうのが出てきて、それをアイドルのあんちゅちゃんがやると、1枚カメラ隔てて見られてて、でも実際は、生きてる人で孤独でもあったりすると思うねん。それが、あんちゅちゃんの、こういう大人の世界にも入って揉まれて、でもやっぱ純粋な10代の顔もポッと見えたりするやんか。

山崎 そうですね。

緒方 そういう、役と役者半分ずつのええ感じのとこが乗ってくるように書かれてて、頭ええなぁ思て! くっそー!!

一同 (笑)

渡邊 舞台ってあんちゅにとってどんなモノですか?

石塚 いいところ?

渡邊 いいところでも、悪いところでも

石塚 私が思ってるのは、人間はすぐ裏切るけど、舞台は絶対に裏切らないなぁって。なんていうのかな。舞台の上にあるモノが本物で、なんでも受け入れてくれるモノって私は思ってます。

山崎 うん。

緒方 今の一言、俺…苦労したんやろなって…思って…(涙)

一同 (笑)

緒方 人ってええもんでもないけど、悪いもんでもないんやで(涙)

一同 (笑)

石塚 全部受け入れてくれるし、全部肯定してくれる気分になります。

山崎 それは舞台を信じてるから、舞台も受け入れてくれるんだと思う。僕が出演をしてほしいって思う人たちは、今回もそうですけど、この人は演劇ってものを信じてるって思えるかどうかだったりする。信じたからって全部はうまくいかないんだけど、でも、絶対最後信じてたやつが、勝つと思うし、それを証明したいですし。

緒方 でもなんか、今の聞いて、この現場入って、やっぱ本当にシンプルでいいんだなって思った。シンプル・イズ・ベストで(笑) だから俺今ついてる手垢みたいなやつ一生懸命落とそう思て。

一同 (笑)

渡邊 いや、面白い。

山崎 落とそう思ってたら落ちます。夢見れば全部叶いますから。落とそうって思っててくれれば、絶対落ちます。

渡邊 みなさんに聞きたいんですけど、山崎彬 作・演の今回『罠々』の物語ってどうです?

岡田 角度が多くなった気がしますね。

渡邊 この質問したっていうのもね、個人的にすごい僕は『罠々』は物語として魅力的だなと思ってて。だから悪い芝居史上一番良い作品になるんじゃないかって僕は勝手に思ってて。そこぐらい目指して欲しいし、それが出来る環境で、本当にみんなで作ってる感じがするんで。

岡田 りょうくんの言う、悪い芝居史上みたいなのは、凄い感じる。『メロメロたち』はもう一個の線を強固に描ければ成立したなっていうのがあったけど、今回は色んな線を多角的にギュイーンって重ねて作らなあかん。それが出来たら最強やと思うし、でもめっちゃ難いな…と。

渡邊 でもそれさ、なんかもう積みあがってきてない?

岡田 そう、色んな積み上がりはできてきてるなって思う。けど、まだ完成してへんから、楽しみでもあり、怖くもある。

山崎 昨日、演出助手の藤嶋と喋ってたんですけど。「どうよ?」みたいな感じで。なんか新メンバーとして、同じ新メンバーが、あいつはあんなに貢献してるのに私は何が出来てるんだろうとか思うって言ってて。でも多分一人で新メンバーで演出助手やってたら、そうじゃなく甘えてた気もするから、もっと貢献したいと思わせられる環境でよかったって言ってて。スタッフさん同士も、映像でそういうのやるんだったら、照明ではこうやるぞ、美術もこうやるなら、衣装も攻めるぜっていう関係性だし。この『罠々』というおもちゃでどう遊びますかっていうような作品だからね、今回は特に。

岡田 うんうん。

山崎 シェイクスピア作品くらい、未来の演劇人にこれどうすんの?って思わせる本を書きたい。だからyoutuberとかが出てくるような本が書きたいなって思ったのは、いわゆる城の兵士とか教会の司祭だとか王族とかさ、今の時代ではフィクションでやるしかないけど、昔は、多分、今でいうフリーターくらい当たり前に存在してた人たちでさ。フリーターって言ったら変だけど(笑)

渡邊 そうですね。

山崎 だから僕は、今ってみんながフリーターだとか同棲してるカップルのラブストーリーだとかを書きがちなんですけど、もうそれは時代劇になっていくわけだから、僕は次の未来の時代劇を書きたいって思った時にyoutuberとかを出したいなと思ったの。すごい未来にはもう流行ってなくて、王家の兵士の役をやる感じでyoutuberを未来の人がやるんじゃないかなっていう勝手な目論見がある。そういう感じで、みんなが未来人のように、この芝居どう捉えようみたいなのをやってくれてるのがすごく楽しい。今日作ってたシーンじゃないですけど、どうやるかわかんないシーンなのに、バチッとハマるみたいな、ああいう運命みたいなの僕信じてて、運命を感じた時って、その芝居大体上手くいくから、もう上手くいくと今日100%確信しました。そういうものがどんどん生まれてる。今回、映像を入れたら面白そうだなーぐらいから始まったものが、もう今無いとおかしいぐらいになってて、それってバンドものやり始めた時と近くて。新たな試みが物語の必然になった時、すごいエネルギーを出せる気がしてますね。はい、喋りすぎましたぁ。

一同 (笑)

石塚 私今回、映像で色々してることで、お客さんから見るものと絶対的に違う角度で撮られてたりとか、映像通したらりょうさんの顔も全く違うように見えるしっていうのが、すごい気持ち悪いなって思ってて。そこの気持ち悪さをお客さんにどう伝えられるかっていうか、なんていうんやろう、その気持ち悪いのを肯定して届けたいですね。

渡邊 業の肯定みたいなものなんですかね。

緒方 この作品の中を映像が入って見た時の顔の違う気持ち悪さとか込みで、この作品の中身を味わって欲しいっていう、そういう感じよね?

石塚 そうそう。

緒方 ちょっとだけ話ずれるけど、一稿目捨てたじゃない全部、俺あれがね、アッパレやと思った!

一同 (笑)

緒方 捨てて書き上がってきたものが、もう前も言うたけど、街というものをね、ちゃんと感じた。例えば、メインの登場人物3人。この線から先が無いから進まれへんっていったのに、それが東京行って続いていた男。曖昧にして街の中で生きてる男。降りた女。この3人の閉塞感が溜まってるんだっていう、その街の匂いっていうのがちゃんとした。

山崎 あざっす。

緒方 生きるってことが、この話のテーマでもあるのかもしれないけど、フィクションがリアルでもいいんじゃねえかっていう、なんかね、優しいなと思ったの。愛があるわっていう。世の中、決められたルールがある。そこからこぼれてしまうと、もうあかんよって言われるわけ。デタラメに生きてるわこいつって言われたりされるわけ。でもみんな一生懸命生きてるやんか。その決められたところでみんな生きてるんだけど、それをさ、分かりやすく、『罠々』の街を通してうまいこと描いてるわあ。

一同 (笑)

緒方 僕は、この作品ていうのは、人が生きるってことを描いてると思ってるのね。それが嘘なのかリアルなのか、頭の妄想なのか、思いなのか、念なのか、なんなのか分からへんねんけど、時代のスタンダードになったらいいって山崎くん言ってたけど、僕はなるような気がするよ。

山崎 一見、楽しい芝居に見えるけど、ふとゾッとしてもらえれば。だってそれが罠ですからね。

緒方 さっきあんちゅが言ってたけど、映像通した時気持ち悪いって言ったやん。まさにそういう罠。

山崎 見え方が変わる、それが「罠」だと思う。だから僕は俳優さんに、映像で撮るからって映像とかカメラに向けた演技をして欲しいわけじゃないと伝えた。それなら映画撮ればいいから。そうじゃないんですよ。舞台上に、今ここにいて、ここにお客さんもいるのに、映像にも向けなきゃいけない時の顔って、絶妙やろうなと思ってて。生だから面白いっていうけど、映像の面白さってのもあるから、じゃあ生を映像で撮った生って、また違うおもろさとかがあるんじゃないかなと思ってやったら、これはイケるな、と思った。

渡邊 最後、お客さんに向けての一言といいますか、それぞれメッセージをもらえると有難いです。僕から言わせてもらうと、まず悪い芝居の、物語として、山崎さんが書く本ていうのは凄い良い本だし、それがこのメンバーだからそれこそ書かせてもらってるっていうことも言ってたんですけど、今回は特に、生まれた、カチッとはまったなってみたいなのを感じます。あと、それこそ色んな人の色んな違った見方で変わるから、その全部が重なるべくして重なる作品になると思うので、それがすごいなって。だから、楽しみですね。

岡田 「次の悪い芝居どんな感じ?」って聞かれた時に、今までのどれにも似つかわない、説明できひん感じ、すごいするので…うん、見てください。

石塚 私は悪い芝居が好きで、好き好きって言ったら2作品目も出してもらったんですけど、今回は観れないのがほんっっっとに悔しい! ほんっっとに悔しくて、観れる人がうらやましくて仕方がない!!!

一同 (笑)

渡邊 あんちゅに、あのシーンのあんちゅを観て欲しい。

岡田 あぁ~!

渡邊 すごい、すごいいいんだよ、もう。確実に僕の中では『メロメロたち』のあんちゅは超えてますから。

山崎 超えてると思うよ。

緒方 うん、相当いいよ!

渡邊 あれはね、あんちゅが、役者を、舞台をやっていく上で「ああここがはじまりだったんだな」って思って、もちろん『メロメロたち』からはじまってるんだけど…。

山崎 『メロメロたち』からはじまり、さらに『罠々』ではじまり…なんかもう…、

渡邊 はぁ〜…、なんかねぇ…、歩んでゆくんだなっていうねぇ…、

山崎 いやあ、今回本当にね、前よりも役者をやってもらいますからってね、オファーさせて頂いて……いやあ本当に……(しみじみと小声になってゆく)

渡邊 彬さん、ちょっと声大きめで!

一同 (笑)

石塚 毎公演、毎作品違うだろうけど、今回は特に、しかも生で観れたということを、お客さんはほこりにおもってもいいと思う!!!

一同 (爆笑)

山崎 胸張って欲しいね。

渡邊 そういう作品だと思うよ、本当に。

緒方 (爆笑)

石塚 本当にそう思います! 羨ましくて仕方がないです!

山崎 観てみたいよね!

石塚 本当に観てみたいです!

山崎 おもろいやつに出たいんやけど、おもろいやつは観たいから…。

渡邊 こうなりますよね…。

山崎 おもろいことやり続けるとおもろいこと観るのは無理なんだよ、一生…。

石塚 DVDになるだろうけど、でも、絶対違うじゃないですか!

緒方 絶対ちゃう!

渡邊 DVDにするの難しいですよね。

石塚 本当に難しい。しないでもいいぐらいのものですもん。出来ないと思うし。

渡邊 緒方さんはどうですか?

緒方 僕は、やっぱ舞台上でみんな出ててさみんな存在してるから、人の持ってる力っていうか、舞台の持ってる力っていうか、それを観てほしいな。作品はね、もちろん凄く刺激される作品で、すごくいいから、あとは役者がそこに存在してる様をね、観て欲しいなと思います。個人的には、おっさん必死でやってるから! おじいちゃん頑張れ! みたいな感じで観て欲しいですね。

一同 (笑)

渡邊 じゃあ最後、彬さん。

山崎 そうですねぇ。今まで見たことないだとか、今までとはまた違うだとかっていう部分はあるけど、お芝居への臨み方っていうのは何も変わってなくて。それはものを作るクリエーターとしての話。あとは生きてて、人には言えないしTwitterとかSNSでは書けない、言葉で言えないってものを舞台は乗せれる。特に今回、お腹スッキリ全部出たーってくらいブリリリーって出てるんで、今までのものをグチャって合わせて、ポーイって出したら新しいものが出来てたみたいな部分はある。だから、今まで好きだった人は間違いなくちゃんと好きって思えるだろうし、まだ出会ってない人だとかに、ああこういう作品をずっとやってたのか、なぜ今まで観なかったのか、馬鹿、あたし…、

一同 (笑)

山崎 と思ってもらえるような作品になる気がするので、「THE悪い芝居」として、新メンバーもそうだし、みんなでこの作品を生み出させてもらって、ありがとうございますっていう感じなので。

緒方 いえいえ、ありがとうございます。

山崎 後々10年20年後とかも語れるような、語り継がれるような作品に、なるんじゃないんですかね。宣伝文句としてでなく、今回は実感としてあるんで。

渡邊 そうなんですよね。

山崎 だから、言いすぎるとあれなんすけど、まぁよくみんな言いますけど、演劇なんか観ないでも後悔も損もしないです。観なくても何も変わんないすから人生。その人にとって観ない選択も幸せへの道だし、そんな偉そうなこと言えない。だからこそ、そこまでして観る選択をした人には、観たら得をするっていうの心がけたいです。今回特にそうだと思います。観たらきっと、観てなかったら後悔したかもなって思えると思うんで。上げまくっていいんじゃないですか、期待値。うんいいと思いますよ。全然、遥か上空にいると思うんで。

渡邊 そうですね、正直どんだけ期待上げても負ける気がしないですね。

山崎 大丈夫。だから宜しくお願いします。

渡邊 はい、じゃあ最後に全員でなんかそれぞれ思い思いの一言で終わらせてください。

山崎 文字でどうすんの(笑)

渡邊 せーのでいきますよ、お客さんに向けて。せーのっ!

一同 ――――――――!!!!!
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