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『春よ行くな、』トップページ > 出演者インタビュー(奥田ワレタ)

悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
出演者インタビュー 第一弾

撮影:交泰

奥田ワレタ 兵庫県出身。「クロムモリブデン」メンバー。

『春よ行くな、』の主人公・天上底(テンジョウ・ソコ)を演じるのは、クロムモリブデンの奥田ワレタ。そのふんわりとした魅力の奥底に潜むものは? 何度も思い出し笑いをしながら、『春よ行くな、』についてゆっくりと語ってくれた。



――クロムモリブリデン公演も『曲がるカーブ』(2013年12月~2014年1月)以来はゲスト出演だけで、ちょっと舞台をお休みされていましたね。その中で、『春よ行くな、』に出演しようと思われたきっかけから教えてください。

演劇自体ををどうやって続けていこうか迷っていた時期で、そのときに山崎彬くんが声をかけてくださったんです。主役だったからかなぁ? なにか面白そうで、考えているうちに、やりたいなあという気持ちがとても大きくなっていったので。

――5月にプレ稽古で初演台本を使って読み合わせをしました。初演台本の印象は?

最初に読んだときは、なんだか面白そうな気もするけど、抽象的だなと思いました。ひとつひとつのせりふや、やりとりは面白いけど、「どういうお芝居?」って聞かれたら、はっきり言えないみたいな。

――では、新しく書かれた“再生”の『春よ行くな、』は?

面白いと、素直に思いました。私の作品の理解が深まったからかもしれませんが、より具体的になったなと。初演のDVDも見させていただいたんですが、前のは「若いなあ」って感じでしたが、今回は39歳の私にもわかる台本になった気がします。初演は、いい評判ばかり聞いていて、今回の出演を決めても最初は本当にプレッシャーだったんですよ。稽古中にお休みが1週間あったのですが、プレッシャーで「うぅーん」となって、体がガチガチで、全然せりふが入らなかった。稽古を再開してから、「あっ。違うものを作ろうとしているんだ」みたいなことがわかってきて、少しずつプレッシャーが取っ払われてきたかな。そして、今は「まっ、いいか」って、なってきました。

――プレッシャーは稽古をやりながら克服してくタイプですか?

克服できるときもあれば、できないまま、本番ガチガチのときもあります。自分だけでやろうとしちゃっているときって、拠り所が自分しかないから。なのに自分に自信がないからガチガチになちゃうんです。でも、なんだか今回は、人に頼れる部分をたくさんつくってくれているので、プレッシャーを感じないでいられているのかな。

――天上底ちゃんは、クロムモリブデンではあまり演じたことのない役柄だと思うのですが。

そうですね。京都で演劇をやっていた時代は、ちょっとやったことがあるかなと思うけど、東京に来てから、こういう役柄はやってないですね。人を惑わすほうは、あまり上手じゃないので。底ちゃんは、かき回されているようで、かき回しているんですよ。本番に向けて私の考えも変わってくるとは思うのですけど、底ちゃんは、あんまり自分のことが好きではないのかなと思います。器用ではないですね。あまりにも決められない人で、決めてもらってきた人生だったんだろうなあと。私もそういうところあるので。

――共感する?

共感するところと、全く共感しないところがあります。共感するところは、あんまり自分をもっていないとこかな? もってないくせに、でも「ある」っていう感じ。あと、流されやすいところ。違うのは、私は忘れっぽいんですが、底ちゃんは忘れないところ。私は、自分を明るく見せようとして、その見せようとするベクトルを抱えて生きていると思うんですけど、底ちゃんは、それはないなあ。だから隙があるのかなあ。男の人からは、守ってあげたいタイプかな。でも、本人は全く守ってほしいなんて思ってない。私も若いころはそうだったけど、なのに「守りたい」と言うやつが寄ってくるんですよね。でも、「なんだよ、守るって!?」って、思ってましたね。なんかね、自分のレベルより戦闘能力低そうに見られている感じが似てるかも。底ちゃんも私も、そんなに弱くはないのですけどね。



――山崎彬の演出は初めてですね。

山崎くんは、そんなにたくさんの演出家さんとやってきたわけではないですが、すごく楽しそうにお芝居をつくっているので、なんかこっちも楽しくなる。あと、私はプレッシャーに弱くて緊張しいなので、そこをわかってくださってなのか、もともとそういう人なのか、常にフラットにしてくださっているのでとても助かっています。論理的じゃなくて、イメージで伝えてくれるのも、すごく助かりますね。

――クロムモリブデンの青木秀樹さんはどういうタイプ?

青木さんは、なぞかけみたいなことばかりいうので、迷路に入りこんじゃいますね。“再演”ということもあるのか、山崎くんのほうが作品に対するイメージが強いですね。私はイメージに沿って埋めていく作業のほうが役者としてはスムーズなんです。

――全員が初共演だそうですね。

はい。大原(研二)さんは、頼りがいの塊みたいで全部あずけちゃっています。(斎藤)加奈子ちゃんは面白いんですよ、あの人すごいです。片桐はづきは、すごく真っ直ぐでまじめなので、私ももっとまじめにならなくちゃって思う。小笑顔唇って役柄に、ぴったり。(永島)柊吾くんのお芝居は角がなくて好きですね。植田(順平)さんも、角がない。角のかたまりみたいなのは、ぎっしー(北岸淳生)ですね。角ばっかりで面白いです。山崎くんはかっこいいです(笑)。慮くんで優しい目をするときに「めっちゃ、かっこいい!」って思っちゃう。あと演出家さんだからか、次のせりふをすごく言いやすくしてくれますね。



――人をわかりたいと思いますか?わかるって、どんな瞬間ですか?

わかりあいたいって思いますね。全員ととは思わないけど。わかるって、気持ちの種類とか量とか全部が伝わることかな。種類は伝わっても量までは伝わらないこととかあるしね。伝わり方って日々、それぞれの状態によって変わるし。好きだという気持ちだって、食べたものや気分で変わったりもする。自分がどの程度、どうなのか、向うがどの程度どうなのか、程度感かなって思います。



――では、最後にメッセージをお願いします。

いい役をいただいています。私はガチガチになって悩んで思考が止まってしまうというのをやりがちなんですが、今回はそういうことしないように向かっているのもあるし、稽古の進め方もあって、楽しいです。稽古が始まる前は、きれいごとですけど「誰かのことを恋しくなってくれたらいいな」と思っていたのですが、なんか、もうそこはわからなくなってます。ただ、この舞台を観て、グラグラゆさぶられてほしいです。笑ったり、ふひぇーんってなったりしてくれたらなって、思っています。