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『春よ行くな、』トップページ > 出演者インタビュー(片桐はづき)

悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
出演者インタビュー 第四弾

撮影:交泰

片桐はづき 千葉県出身 フリー。

そのたたずまいはまっすぐで強い。だが、『春よ行くな、』で見せる小笑顔唇役の片桐はづきは、どこか繊細だ。キュートな役名のそのままに。



――『春よ行くな、』に出演しようと思われたきっかけから教えてください。

そもそも、悪い芝居に声かけられたら出たいというか、声かけられなくても出たいと思っているので、迷いみたいなものすらなかったです。再演だし、怖いなというのはありましたけど、出演の依頼をいただいたときは出演することが前提でという感じでした。

――悪い芝居とは、アンダーヘア『マボロシ兄妹』でもご一緒しています。

その前に、黒色綺譚カナリア派『誤/娯楽』で山崎(彬)さんと共演して、そのあとカスガイ『バイト』でも共演して、『マボロシ兄妹』でようやく悪い芝居に出られて、演出を受けることができたんです。

――フリーで活動しながら、劇団への客演も多いですね。悪い芝居との出会いは?

6年前に『キョム!』を観たんです。ちょうど新しい劇団を観たいと思ってた時期で、悪い芝居も知らなくて、でもチラシが気になっていたので行ったら駅前劇場がガラッガラで、客席も3、4列ぐらいしかなかった。「うわ、大丈夫かな?」って思ったんですけど、それがすごく面白くて。後日、山崎さんに「お芝居とても面白くて、まぁ簡単にいうと出たいです。ワークショップとかオーディションとか機会があれば」っていうメールを送ったら、山崎さんから連絡をいただいて。スケジュールがなかなか合わずにいるうちに、共演する機会が先にきました。客演は、基本的に大好きなところにしか出ていないので、違和感は自分の中にはなくて、図々しいんですけど全部ホームだと思ってやってる感じです。

――『春よ行くな』は初演をご覧になっていますね。リインカーネーション版の台本の印象は?

思っていたより、渋い。実際の俳優の年齢が上がっているのもあるけど、ポップさみたいなところから渋さみたいなところへ、そういう良さへ変化しているかなって感じました。

――小笑顔唇という役に、どう出会いたいと思っていますか?

悩みまくっています(笑)。最初台本読んだ時は、この人の気持ちがわかるっていうほうが多かったんですけど、実際やってみると、日々、わかることとわからなくなることが同量に増えていって。「あっ、思っていたよりこの人深いかもしれない」「自分自身と似てると思っていた部分は氷山の一角で、私の知らない水面下の部分も結構あるんだな」ってことを考えています。

――最初にわかるって感じたのはどのあたりですか?

ひと言で言うと、難しいけど、「正直」。悪意に対しても正直なところかな。好きなものを好きって言うのは誰でもわりと簡単だと思うんですよね。でも、小笑顔さんは嫌いなものも嫌いって言いたいし、相手にも伝えたい。私自身もわりと嫌いって言いたがるタイプ。そこはすごく似てると思います。この子は、言いたがりなんですね。「本当なんだから言っていいじゃん!」っていう自分の中の正義がちょっと強すぎて、でもそれは他人に対しては優しくなかったりするんですよね。

――では、水面下の部分とは?

私自身のことでもあるのだけれど、自分が正しくて自分のことを言いたいっていうのがどこから来ているのかっていう、その大元みたいなところですかね。それこそ承認欲求とか、そういうことなんだと思うんですけど。初日前の今はまだ、そこが不確かです。

――演出家の山崎彬はどんな感じですか?

『マボロシ兄妹』のときはそれほど思わなかったんですが、今回は大きな意味で優しいですね。もちろん言葉遣いや態度も優しいんですけど、それより作品全体を良くするためにどういった言葉を使ったほうが良いかって部分で優しい。この人はこう言ったら嬉しいだろうとか直接的なことじゃなくて、作品のためにどういった言葉を使ったら、この人が良い方に行くかっていうような選び方をしてくれている。結局、それが作品のためになるんだってことがちゃんとわかっている。せりふは、言葉も難しいし言い回しも独特だから、きっとそこに書いている言葉に絶対にこだわりがあって、一語一句そのまま言ってほしいというのはあると思うんですよ。でもそれより大事なものが中身だってはっきり示してくれているからありがたい。信頼感と安心感が生まれます。



――共演者はどうですか。初めてご一緒する方もいますね?

この中では私が一番、いろんな人を知っているんですよ。初共演は(奥田)ワレタさん、(斎藤)加奈子ちゃん、(永嶋)柊吾くん。キャストが決まった時に、女の子のムードがいいねって周りに言われましたね。3人とも似てないですけどね。仲が良いか悪いかも考えなくて良い感じで、無理もせずにいられるメンバーです。柊吾くんは謎ですね。少なくとも私が今まで出会ってきた24歳とは全然、違う。年齢があてにならない。友達みたいな時もあるし、弟みたいでもあるし、他人みたいな時もあるし、お兄さんみたいな時もあるし、おじいちゃんみたいな時もある。なんかその時々で接し方というか、いる感じが違うから、私はなんというか、まだあたふたしています。

――人をわかりたいと思いますか?

いや。私、人の気持ちなんて絶対わからないって思ってしまうというか、そう信じ込んでいるから、人の気持ちがわかるって言う人は、あまり信頼できない。エスパーじゃないんだから。役に関してのわかるわからないは、表面上の、もしかしたらこの言葉を聞いてこう思って、この言葉が出るっていうのはわかるけど、それが良い印象を受けたのか悪い印象だったかはわからない、という感じかな。

――恋愛に限らず、好きって何でしょうか?

自分の力ではどうしようもならないものですかね。例えばそれが自分の近くにあるとマイナスになったりするとわかっているのに、どうにもならない気持ち。私の役でいうと好きって言いたいという、伝わる伝わらないとかではない、欲求。なんか、痴漢とかに近い気がする。

――痴漢!?(笑)

そうそう。相手のことを何も考えずに、ただ欲望で言葉を発してしまったみたいなね。

――では、観終わってお客さまが一歩劇場の外に出たとき何が残っていてほしいですか?

やっぱりその、初演を観た方はちょっと忘れていただいて、あくまで別の作品として見ちゃった方が楽しいんじゃないかなって思います。もちろん、見ていただいて初演を忘れられるかどうかっていうのは、こちらの仕事ではあります。何が残っていてほしいか……はまだ見つけられてないですね。これが初日までに見つかるのかもわからないんですけど、それを今考えてるところかも。それこそ、言葉にはできない、あれかな。元気とか勇気とかそういう言葉ではちょっと言えない感じのものだろうなという気はしています。