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『春よ行くな、』トップページ > 出演者インタビュー(植田順平)

悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
出演者インタビュー 第五弾

撮影:交泰

植田順平 京都府出身 「悪い芝居」メンバー。

2013年版『春よ行くな、』から続投の植田順平。その容貌と相まって存在感は抜群。今回は初演とは異なる役柄が加わり、稽古ではパニックになるほど悩んだらしい。



――まず、悪い芝居リインカネーションで『春よ行くな』を“再生”すると聞いたとき、どう感じましたか?

がっつり再演というのは初めてなので、「へえ、再演なんだ」と思いました。アンダーヘアvol.1『マボロシ兄妹』のときも過去に上演した作品をベースにしていますが、全然違うものに書き直されていたので、『春よ行くな』も「どのくらい書き換えるのかな」って思ってたんです。今回の台本をもらったら、思っていたより同じだなって思った覚えがあります。

――初演にも出演していますが、配役が少し変わりますね。

配役は予想通りだったのですが、台本読んでいく中で、「あぁ~、どうしよう?」ってなっていきました。今回は初演時の美里多里綺麗(ミリタリ・キレイ)さんの役どころも担うことになったのですが、どっちの役を今、植田は演じているのかってのがすごく曖昧なところにいってしまって。多分それをはっきりさせた方が役作りとしては楽だと思うんですけど、はっきりさせない方が面白いんだろうなと思ったんです。で、はっきりさせずに作っていたら、パニックになってしまったことが、稽古中にありました。

――パニックというのは、気持ちが切り替わらないとかそういうことですか?

気持ちかな? シーンの移り変わりもシームレスに変わるからその中で実は役は変わっているはずと思っていたんですけど、前のシーンと次のシーンの自分の役が、違う人なんですけど、すっと繋がってしまって。次のシーンに変わるときに役を変えたら、役が入れ替わって逆になってしまう?って思って。「あれ、俺さっきが間違ってたんかな」「いや、間違ってない」「間違ってた?」らへんのとこにいってしまった。そもそも分けて役作りしてなかったりするから、「あかん、わからんくなってきた」ってなっちゃいました。

――この作品の奥底にある部分につながる感覚ですね。

と、思ってるんです。だから、今回は役どころとしては脇役かもしれないけど結構、重いメッセージを背負った役にはなったなと思っています。役をはっきりさせたらあかんのかなって思ってからは、しばらく悩んで、まだ悩んでます。これまで複数の役を演じたことはありますが、自分の中ではっきりさせてるなら問題ないという解釈で作っていた。でも、今回は自分であやふやにして、そして「あやふやを、ちゃんとやる」を選んでますね。矛盾だらけ。その矛盾を自分でどう処理していくかが面白いんですけどね。

――悪い芝居にとって、『春よ行くな』と『春よ行くな、』はどんな位置づけの作品ですか?

『メロメロたち』『キスインヘル』『スーパーふぃクション』とバンドものが3つ続いて、それの1作前が『春よ行くな』。で、戻ってきて『春よ行くな、』。劇団自体のリインカーネーションを感じます。あと、全体的に年齢が上がっているところは面白いところだと思います。劇団員の参加が少なめで、山崎さんがメンバーじゃない人たちを演出しているところって、使い方が面白いんですよね。お客さん的にも違う人たちを使うのを見るのも面白いと思います。美術のKUNIOの杉原邦生さんも、「いい人連れてきたなあ」って思いましたしね。初めて聞いたときは「え!?今、一緒にやるんですか?」って言っちゃいましたけどね。



――共演者はいかがですか?

みんな大好きです(笑)。僕は悪い芝居しか観ないで芝居を始めて、それで悪い芝居に入ってからほかの芝居見るようになったんですけど、初めて観た舞台がクロムモリブデンでした。(奥田)ワレタさんってすごい面白い方だな、ブログとか見て絵も描いてはんねんやとか思ってた。大原(研二)さんも、DULL-COLORED POPで観ててすげえ素敵で、僕が同じ年くらいになった時に、キャラクターの違いはあるにせよ、ああいう風なお芝居ができたらいいなというような目標みたいな存在です。斎藤(加奈子)さんだけ舞台を拝見したことがなかったんですけど、稽古中も稽古じゃない時も面白いし(笑)、本当にそのまま舞台に上がれる人なんだなって気がして、いいなあって思ってます。はづきさんは、『マボロシ兄妹』で共演したり、月刊「根本宗子」に出演されてるのを見て、すごい好きな女優さん。稽古での感じが印象深くて、「ああ、この人芝居好きなんだろうな」って。

――役でも関わりが深い永嶋柊吾くんは?

大好きなんですよ、柊ちゃん。東京ハートブレイカーズ『スーパーエンタープライズ』を観たときに、「なんだ、どうやって芝居してんだ」って思って少ししゃべってみたら、まぁそのまんまというか、その人自体がすごく魅力的な人なんだなって思いました。超好きです。

――「好き」ってどんな感覚ですか?

好き、大事、傷つけないようにしたいと思う。物について言えば、僕はわりと物を投げるタイプなんですよ。僕は別に乱暴に扱ってるつもりはないんですけど、そういう意味で、側から見ると、傷つけないように丁重に扱うみたいなことはしてないのかもしれないけど、好きだったりする。ただ人となると、もちろん投げられないんですが、どういう気持ちなんだろう。好き以上に、好きだからこうしようってあまりないような気がしてて。「好き、」で終わるような気がする。

――好きだったらそれでええやんみたいな?

今、それ言われて思いましたけど、好きな人が、好きな人に対してしてることを大事にしたくはなります。好きな人がしていることを大事にしたいと思うのはあるかもしれないですね。ああ、でも、わからんなあ。

――人とわかりあいたいと思いますか?

わかり合いたいって思うこと自体がもう素敵だなって思うし、わかり合えなさは楽しめるもんだと思うし、わかったとしてもわからなかったとしても面白いものだと思うんですよね。なんか普通のこと言ったけど(笑)。でも、だから分かり合えないってことは「違う」ってことで、「違う」からこそ「面白い」なんだと思います。で、分かり合えた時の気持ち良さも素敵だと思う。分かり合えなさでつらい時は、「好き」な時ですよね。嫌いな人とかどうでもいい人だったら分かり合えないってことにすら気づかないし。分かり合えないことを苦しむ人たちなら、僕は愛しく見えます。

――最後にお客さまにメッセージをお願いします。

演劇が好きで京都の芝居を見てきた人に向けて言うと、悪い芝居が京都でやるのも久しぶりだし、「観た方がいいでしょこれは」って思います。絶対ね。杉原邦生さんの美術だし、久々だし、なぜ観ないのかなと思ってしまいますね(笑)。観ないともったいないですよ?

全体に言うと、大げさかもしれないですけど、観ると人生に影響があると思うんですよ。演劇って人生をわりと低い確率ではなく変えてしまうものだと思うんです。僕がそうだから、そう思うだけかもしれませんけど。健康的に観てもらっても悩めるし、「今、病んでんだよな」って思いながら観に来たらより悩むかもしれないし、逆に良くなるかもしれない。何かが変わります。人生をぶんぶん揺さぶってくれますよ。