トップページ
悪い芝居 最新情報 現状報告 メール 付録 グッズ


『春よ行くな、』トップページ > 出演者インタビュー(北岸淳生)

悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
出演者インタビュー 第六弾

撮影:交泰

北岸淳生 京都府出身 「悪い芝居」メンバー。

初演から続投の北岸淳生。今回は悪い芝居ファンにはおなじみの近藤夢に役名も変わり、新たな思いで“再生”に挑む。



――初演から同じ役柄で出演する唯一のキャストですね。リインカーネーション版の台本を読んでいかがでしたか?

台本をもらった時は、話の流れは覚えていたし、あまり変わったっていう印象はなかったんです。登場人物は一緒だけど、話の筋が変わるのかなって思っていたけど、そうじゃないんのかなって。でも、(奥田)ワレタさんや大原(研二)さんらキャストが加わって、稽古をしてみて、人が変わる事によって作品ってこんなに変わるんだって思いました。

――“再生”の実感が後から来たと?

そうですね。再生って格好良いし、輪廻とか生まれ変わりみたいなのって憧れるし、それが持ってる雰囲気はすごい好きなんですけど、“再生”って商売的な外向けの言葉だと思っていたんですね。でも全然違って、作品の生まれ変わりってこういうことだったんだとわかって、うれしかったですね。

――役名のほかにリインカーネーション版で変わったところはどういうところですか?

一番大きかったのが、相方の幅妙子役を初演は男優が演じてたのが、女優さんになったこと。演じているときは女の子だと思っていましたが、男だとどんだけ抱きつこうが無茶苦茶できた。今回は(斎藤)加奈子さんが幅ちゃんをやってくださっていて、最初照れちゃったんですよ。かわいらしいし、面白いですし。前はすごく太っている男の子が演じていたので、それに釣り合う様な役柄でいようと思ってたんですけど、今回はその必要がなくなったので、どうしたら逆にこの世界から浮き出さずに、なじめるかってことから役を考えましたね。

――ほかのキャストの年齢もあがりました。

やっぱり大人だなって芝居をされるんで、役を作る上で参考っていうか、こういう考え方なんだ、じゃあこういう考え方もあるなと試せます。みんな懐が深くて、好きです。

――『春よ行くな』と『春よ行くな、』は悪い芝居にとって、どんな存在の作品ですか?

山崎さんがその時に思った事、やりたい事を、この作品でぶつけるぞっていう作品、ですかね。なんだろう、キメラ?みたいな、その時の悪い芝居の良い部分が全部混じった怪物、みたいな感じ。やっていても怖い。今回も怖くなりそうで、そういう風に作られてる本だと思います。作品自体のエネルギーが強いって感じます。

――役柄は同じですが、役名がおなじみの近藤夢に変わりました。

山崎さんが、ずっと同じ役名なのは「実験やっ!」て言ってました。で、僕は近藤夢が嫌いです(笑)。好きになってもあかんのやろなって思っていて、それやったら嫌いのまんまでいいかなって。

――では、近藤夢ってどんな人ですか?

良いやつやと思うんですよね基本。作品によって、ちょっとわがままだったり、押しつけがましかったりの比重が変わるけど。『春よ行くな、』だからこういう人物という考え方はしていなくて、その時々に誰にどのくらいの興味があって、どのくらい良いやつでいたいのか、みたいな感じで考えています。

――共演者では、相手役の斎藤加奈子さんとがっつり絡みますね。

変で不思議な女優さん。しっかりしているようでしっかりしてなかったり、しっかりしてないなっと思ったら、しっかりしだしたり、どっちなんだろうって思う。一緒にやってて楽しいし、話せるし、「どう動く?」みたいな相談したりとか、ここは自由に楽しくやってみましょうみたいな話ができる相方ですね。

――先輩の大原研二さんは?

僕、DULL-COLORED POPでずっと観ていたんですけど、憧れの人ですね。ほんまに見てて恐い。暴れるとか狂ってるじゃなくて、人としての迫力っていうんですかね、圧っていうんですかね。芝居だと分かってるけど恐い。だからほんまに格好良いなって思います。

――その大原さんが演じる戦泰平さんはじめ、登場人物も興味深いです。

登場するのは、みんなあきらめられへん人たちやから。あきらめたフリしてるだけだし。なんか、寂しいですよね。おかしいなって思いますね。みんなおんなじ方向見て、おんなじ未来を目指したいと思ってるはずやのに、合わへんっていうのは。なんでなんだろう。でもこれはね、ほんとに、現実の世界でもあることですから、どこか観ている人にもリンクしていくんじゃないかな。

――人とわかりあいたいと思いますか?

どうなんですかね。僕、多分、悪い芝居に入る前は、分かったつもりになる人間やったと思ってたんですよ。でも悪い芝居に入ってからは、「人って、えーっと、分からないんだな」ってなってきた。作品に影響されて人格が変わっていったのかな。人って、一生分かりあえないんだろうなっていうのはありますけど、でも、そこであきらめたらダメなんだなっていうのもありますね。わかりあえへんっていうのは、わかったうえで、それでも、わかろうと努力する。わかろうとしたいっていう希望ですかね。この希望だけは捨てたらいけへんなって、『春よ行くな、』やりながら思いましたね。



――では人を思う気持ち、好きっていうのはどういう感覚ですか?

そうですね、えーっと、なんだろう……。人ってその時々で気分変わりますよね。そっとしておいて欲しいとき、話して欲しいとき、独りで悲しいとき、嬉しいとき。そういうのをなんか、何も言わずに分かるし、分かってほしいっていうのが通じあえたときみたいな、感じですかね。うーん、好きの表現とか色々あって、たぶん全部含めて、嫌いなところも含めて、好き?かな。あー、難しいなぁ。

――言葉にならない何かってどういうものだと思いますか?

僕は、どっちかっていうと、口下手で、普段しゃべるときとかも、どちらかと言えば、その人に聞こえる程度の音量、その人にだけ聞こえたらいいかなっていう声量でしゃべるんです。だから僕は、その何かを自分で考えて、行動で出そうとしますね。信じて欲しい人がいたとしても、多分、「信じて」っていう言葉だけじゃ伝わらないじゃないですか。信じてもらうための行動をしないといけないって思う。じゃあ、何をすれば、信じてもらえるのかっていうのは、それはもう時間がかかりますけども、裏切られたりとかいう、こんだけしてあげてんのにみたいな気持ちが湧くときもあると思うんですけど、そういうのに 屈しひんっていう、気持ちを持って行動するしかないって気がしています。

――最後に、皆さんにメッセージをお願します。

この作品を観てショックを受けた人は、それに怯えずに、力強く、今いる現実の世界を生きてほしいですし、もし観ても、何も思わなかった人も、改めて、自分というものを考えてみてほしいなと思います。感じ方も人それぞれではありますが、何か動くと思うんですよね。