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『春よ行くな、』トップページ > 出演者インタビュー(永嶋柊吾)

悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』
出演者インタビュー 第七弾

撮影:交泰

永嶋柊吾 福岡県出身。 「青年座映画放送」所属。

永嶋柊吾、24歳。『春よ行くな、』出演者の最年少。そのたたずまいは、年齢不詳。免罪符揺に、絶妙なさじ加減で向き合っている。



――今回、『春よ行くな、』に出演しようと思われた理由は何ですか?

(山崎)彬くんとは、俳優として2本共演して(東京ハートブレイカーズ『スーパーエンタープライズ』、『トンマッコルへようこそ』)、すごい大好きになって、どういう演出をするのかにも興味があったんです。ほかの出演者の方も、初めてだけど、なんか、おもしろくなりそうだなと思って。

――100席ほどの小さい劇場ですが。

小劇場は好きです。一時期、舞台が少なかったのですが、舞台をまた好きになってきました。いいモチベーションになってきたかなと思います。

――まず初演の台本を使って読み合わせをしました。その時の印象は?

誰が書いた本かわかっているから、「こんな本を書く人が、僕とよく仲良くしてくれているなあ」と思いました(笑)。人の内側のことをしっかり見て言葉に書いているっていう印象で、ばかなやりとりしている僕となぜ仲良くしてくれているんだろうって。それから単純に、頭がいいなあと思いました。

――今回は再演ではなくて、リインカーネーションと称し“再生”としています。再生ってどんな感じでしょうか?

なんですかね。出演者のみなさんもそうですけど、初演のDVDを観た人と観ない人がいたり、僕は流し見をした程度ですが、そもそも再演という意識がないっていうのが、みんなにはちゃんと浸透していると思います。初演の台本のときは、わりと冷たいというか硬いというか、地下室みたいな温度を感じていたのですが、リインカーネーション版が来たときは、新しいというか、このメンバーでやるっていうのにちょうどいい温度だなと感じました。

――今回は新キャストと稽古を重ねてから、改訂版の台本をつくっていきました。

僕の役に関しては、彬くんが普段、僕が言わないワードをちょいちょい挟んできたなって感じで、「こう言わしたろう」というのを感知して、「はい、はい、はい!」ってやってます。

――演出家・山崎彬はどうですか?

感覚としては共演しているときと変わらないかな。こっちの目線にいるって感じがしていて、演出しているのだけど、なんか一緒に考えていてくれているし、考えてくれよというのも感じるし。チームとしてしっかりやれるなというのを、強く思います。

僕は頭の中でどうやろうとか考えてやるより、ぽーんとまずやってみたほうが楽だって思っている。いつも最初は戸惑うというか、自分が合っているかどうかは全くわからないけど、今回は「なんでも、やるよっ」ていう感じでした。ほかの人を見ていると、彬くんの伝えたいことっていうのはぼやってわかるんです。それを、自分でやるときの難しさはあるんですけど。

――山崎彬以外は初共演ですね。天上底役の奥田ワレタさんとは向き合うシーンも多いです。

ワレタさん…(思い出し笑い止まらず)、面白いです。僕も口下手のほうですが、『春よ行くな、』をやっているからなおさらというのもあると思うけどふたりで話していると、ほぼほぼ主語がない状態で、よく途中で何の話をしていたか確認しあうんですよ。仲良くしようとしてくれるし、サイズ感とかも含め、可愛い人だなあって思います。女優の皆さんは、すごいですよね。みんな言いたいことをちゃんと言ってきてくれるし、最年少で初めての人だらけなのに受け入れてもらえて、珍しく人見知り感が出てないです。

――免罪符揺くんは、どんな人ですか?

言いたいこと言う人だと思います。過去のせいなのか、自分はこう思うという主張はポイントポイントでものすごくあって、そこに関しては言えるけど、でもそうじゃないときはものすごく自信がもてなくなる。基本的にコミュニケーション下手。まあでも、下手って何なんだよなって感じなんですか。揺くんに共感するというか自分と重なるところは……ほとんどないなあ。底のほうが、自分に近いかなと思うところがありますね。

――好きっていうのは、どんな感覚ですか?

好きなほど、執着しないんです、僕は。自由というか、そのままであってほしいから。でも、揺は執着しますよね。初めて底と出会うところは、顔が好きとかわかりやすいきっかけだったのかなと思っているのですが、底は揺くんにとって心地よい距離感の人で、追いかけたい人だったのかなと思う。自分のものにしたいとは思っているけど、したくないとも思っているんだろうな。

――言葉になる前の「なにか」って、どういう瞬間に感じます。

僕は人から何か言われたりしたとき、会話のスピードが遅くなるのは、言葉になる前に頭の中で8人ぐらいが討論を始めるからなんです。それが言葉になっていくかどうか、そのときじゃないとわからないんですけど。言葉を選ぶということは、相手のためを思ってだけど、自分の保身だったりもしますしね。悪く思われたくないとか。



――8人は頭の中で何を討論するんですか

「これを言ったらこういわれるから、これはなしにしよう」「じゃあ、こう言う?」「それもなしでしょう」とか。結局、言わないことのほうが多いし、8人の中で一番くだらなかったものを言葉にするかな。「冗談だよ」ですむやつを。だから、ちゃんと話せないのかも。僕は渦中の人になりたくないのかな。

――揺には8人もいなさそうですね。

全然いないでしょうね。これを、芝居でやるのは、すごく難しいんですけど。

――相手をわかりたい、知りたいって思いますか?

知りたいっていうのはあるかな。わかるための手段としても。でも、わかりたいとはあまり思わないですね。わかることができたらいいなあとは思うけど。なんかね、なれ合いみたいになっちゃうと、風通しが悪いって思っちゃうし、そういう関係性だけみたいになっちゃうのもね。「わかってるね」と感じる瞬間はうれしいけど、意識してつくるものでもないし。わかるってまあ、「今、何食べたい?」「餃子でしょ!」「おっ、わかってるねえ」みたいなことですかね。

――では、お客さまにメッセージをお願いします

なんかね、観終わったあと、いろんなことに敏感になれると思うんです。言葉ひとつでも、動きひとつでも。僕が稽古をしていてそうだっただけなんですが。おおげさなことじゃなくて、ちょっと寂しそうな顔している人をみると「幸せになるといいな」と思うとかね。これは、優しくなるとかとそういうことじゃないんだけど、ちょっと、敏感になってくれるといいいなと思います。