悪い芝居 30challenge ④

山崎彬が脚本・演出を務めた舞台『ヴァニタスの手記』の原作者である望月淳先生との夢の対談が実現!

悪い芝居前回公演『ラスト・ナイト・エンド・デイドリーム・モンスター』も観に来てくださった望月先生。
舞台『ヴァニタスの手記』や悪い芝居を観てくださった後、Twitterへ素敵なイラストと共に上げてくださる感想ツイートは、オタク目線からの興奮度高めな感想や作品を創る人ならではの感想など、幅広い視点から書かれており、関係者全員が感激しながら“いいね”ボタンを連打していました。

今回は望月先生と山崎彬による“創作”についての対談。
両方の作品が好きな方はもちろん、どちらかの作品しか知らないという方も、是非最後まで読んでみてください。
最後の一文を読み終わる頃には、両作者の作品が気になって仕方がなくなり、気がつくと本屋や劇場へかけこんでいるかもしれない…!
そんな、両者の魅力に引きずり込まれる対談となりました。

山崎お久しぶりです~。

望月お久しぶりです~。

山崎今回お声がけさせていただいたのは、もちろん『ヴァニタスの手記』を僕が演出させていただいたご縁がキッカケではあるんですけど、それ以上に、観劇後に飛び跳ねて感想を語ってくださったり、その後も悪い芝居の公演に自ら足を運んでくださったり、望月さんの無邪気なお姿を拝見していて「一回ちゃんとお話したい!」と思ったからなんです。

望月こちらこそありがとうございます。舞台化したものを拝見して、観る側の想像力に委ねてくれる部分がすごく多くて、舞台って面白い! と体感させて頂き、こちらもとても感謝してます。

山崎僕が出会った中でいちばん物理的にテンションが上がっている姿を見せてくださった原作者の方でした(笑)。凄く励みになりました。

望月たぶん飛び跳ねながら身振り手振りでお伝えしてたと思うんですけど、山崎さんに初めてご挨拶した時に、「わぁ! 想像通りの方だ!」って言われたのをすごく覚えているんですよ。「初めて言われたなあ」と思いまして。

山崎コミックスの空きページとか、カバー裏だとか、あとがきとかの尋常じゃない凝りようから、作品への愛情があふれるお人柄を想像してたので…(笑)。

望月あれは、かなり本気でやるので体力の消費がえぐくてですね…。

山崎そうでしょうねぇ(笑)。

望月公式が病気とよく言われているそうです(笑)。

山崎小さい時からノートとかに漫画を描かれていたりしたんですか?

望月そうですね。兄や姉の影響もあって、小1くらいの時から何か描いていた記憶はありますね。漫画家になりたいと意識したのは保育園の頃で。

山崎はやいですね!

望月保育園の先生から「絵が上手だから、将来は漫画家さんになるのかな?」とコメントをいただいたことがあって、その時に「そうか、私は漫画家になるんだ」って明確に自覚したことは覚えています。最初はゲームやアニメの好きなキャラクターを自分の漫画の中で動かす感じで描いてて。その後クラスメイトをキャラクターにした漫画を描いたりとか。完全なオリジナル作品は中学校くらいからで、基本ノートにシャーペンでずっと描いてました。私の漫画を読んでくれる友達が居たのが描くモチベーションになっていたと思います。

山崎プロの漫画家さんの前で言うのも烏滸がましいんですが、僕も最初のものづくりはノートに描く漫画だったんです。結構今の悪い芝居の作品と近いような事を描いていて。本格的に漫画家を目指すっていうところまではいかなかったんですけど、ものづくりのルーツであることは間違いないですね。

望月原体験的な感じですか?

山崎はい。その時に描いてた漫画は今も持ってます。

望月あ! あるんですね!

山崎僕の場合は自分だけが読む漫画でした。

望月周りの友達には見せなかったんですね。

山崎学校では何でもない生徒を演じて、家帰ってずっと漫画を描いて、1人で笑ってるっていう小・中学時代を過ごしてました(笑)。

望月私は周りの反応がないと続けられなかったかもっていうのが結構あるので、自分のフィールド内で続けられるっていうのが凄い胆力ですね(笑)。

山崎おかしいですよね(笑)。

望月いやいや凄いことです、凄いことですよ(笑)!

山崎余りページに読者からの質問って設定で自分に質問して自分で答えてたり、勝手な出版社とか書いて、ずっと連載してるってことにしたり。

望月すごく分かります。私も小学校の時とかに描いた漫画に「アニメ化決定!」とか帯つけたりとかあった気がする(笑)。

山崎一緒じゃないですか(笑)。

望月夢見るのは自由ですからね(笑)。

山崎なので最初の話に戻るんですが『ヴァニタスの手記』の舞台化に向けて原作を読ませて頂いて、作品も勿論なんですが、コミックスの本編以外の作り込みに望月さんのお人柄が滲み出てて。

望月出てますか…。

山崎出てます出てます。そこも含めてすごく好きだなあと思いましたもん。

望月私わりと新しいアシスタントさんと対面する時などに、想像していたイメージと違いましたと言われることがあるので、山崎さんの反応は意外でした。

山崎飛び跳ねる人だったら良いなと思ったら、本当に飛び跳ねる人でした。

望月あははは(笑)。はぁー、お恥ずかしい(笑)。

目的地と乗り継ぎする駅は
決まってる

山崎ここ最近、色々小細工しても結局自分の感覚を出すしかないっていう所に行き着くので、自分が作りたいと思うものとか自分から勝手に出るものを出して、それでどう思われるかしかないよなと思うようになってきていて。

望月私も早くその境地に行きたいと思ってるところです。

山崎キャラクターを考える時とかは脳内でどんな作業をされてるんですか?

望月……何やってるんだろう(笑)。考えます。ちょっと待ってくださいね。

山崎(笑)。

望月…全てのキャラに自己投影している訳ではないんですが、たとえ共感は出来なくても理解出来ている感情をキャラクターに乗せたいなっていうのはいつも考えているかもです。どんなに嫌いだと思ってしまうキャラクターにも実はこういう一面があるんだよねって、漫画本編でその設定が出ないとしても、自分の中では掘り下げておいてあげるとか。なんだかんだ自分が愛せる部分がないと描けないのかもしれないです。

山崎僕もキャラクター達を会話させる時は僕自身がその人を演じてというか、その人の価値観だったら何喋るだろうってずっと即興で喋らせながら書いてますね。舞台ではどう演出するのかとかはあまり考えずに、とにかく頭の中に広がっているやりとりをどんどん脚本に起こしていくみたいな。

望月似たような感じかもしれないです。私もキャラクターを作っている段階が1番落書きをします。ビジュアル設定は勿論、このキャラとこのキャラを会話させたらどういうやりとりになるかなっていうのを何パターンも描いてみたり。そこでそのキャラの性格や立ち位置が他のキャラと被っていないかを確認して、ちゃんと勝手に動いてくれるようになったら「よし、行ってこい!」と漫画に送り出しています。

山崎わかります。僕もキャラクターが決まるまで凄い時間がかかるんです。書く前はもうずっとキャラクターのやり取りが頭の中で起こっていて「まだ書かないんですか?」って聞かれて、「いやもう進んでるんですよ」とか言いながら。ま、何にも進んでない時もありますけど。

望月(笑)。

山崎「この先どうなるんですか?」って聞かれても「こうなると思って今は書いているけど、分かりません」っていうのが本当に正直な気持ちなんですよね。「分からないじゃ困る」って言われたら一応答えますけど、「分からないでしょ? 人生なんて!」って、思ってるっていうか。勿論締め切りだったりとか、待ってくださるお客さんのために完成は目指すんですが、でもやっぱりキャラクター達に自由に暴れさせる方が、自分の発想にないものが生まれるというか。

望月ライブ感が凄いですね(笑)。

山崎そうなんですよ。「多分こんな小道具が出てくると思うんですが…」とは言うんですが、申し訳ないことに書いてたら出てこなくなったりとか…。

望月あー…、私も時々ネームでやりますね、それ。

山崎(笑)。

望月「たぶん次の話でここの建物が出てくると思うから、ネームはまだ出来てないんだけど、先に背景の作画をお願いします」って描いてもらった絵が未だ本編に出てきていないっていう(笑)。

山崎(笑)。

望月私はいつも「最終的な目的地と乗り継ぎする駅は決まってる」という話をするんですけど、その駅に着くまでに必要な持ち物(=エピソード)が決まっていて、そこに向かうルートは面白い方でいいやっていう感じで。

山崎勝手に途中下車したりとか(笑)。

望月そうですそうです。予定にはなかったけどここ下車した方が面白いんじゃないかなぁって思ったら、基本的に面白くなる方を選びます。アニメ化の際に先の展開を細かく質問されたのですが「やっべどうしよう。」って思ってました。もちろん提出しましたけど(笑)。

山崎(笑)。

望月一応こうなる予定ですけど、その場で変わるかもしれませんと注釈を付けましたね、確か。

山崎僕も同じようなこと、よくあります。

望月良い言い方をすれば、5年10年スパンで作品を描くことになった場合、未来の自分が考えたプロットの方が面白いかもしれないじゃんって希望を託してるっていう事ですよ(笑)。

山崎(笑)。

望月昨日の自分より今日の自分が良いものを出すかもしれないっていう事ですよね、山崎さん。

山崎はい!! もちろん早いに越したことはないんですが、ギリギリまで粘れるのも舞台づくりの好きなところで。稽古場でセリフを俳優さんが声に出して僕の中に全くなかったイメージだった時とか、セリフを言い間違ったけど「そっちの方がいい!」ってなることが結構あるんですよ。

望月めっちゃ楽しそう!!

山崎その作業がすごく好きです。脚本の上で書ける事なんて限られてるんで。普通に会話するシーンのつもりでいたのに「あ、この人床にのたうち回るんだ」みたいな演技を俳優さんがやって、「あ、全然床のたうち回れるな、このキャラ」って僕が逆に教えてもらって、そんでもっとのたうち回れるように前半も修正しながらその後の展開ものたうち回れるやつに書き直しした。何言ってんだって感じなんですけど、ライブで書き換えられるんですよ演劇って。そこが凄く好きで。もちろん色んな人が動くから、実現可能だとか、予算的にいけるっていう所は考えなきゃいけないんですけど、閃いたなら夢を語る事はやめちゃ駄目だと思ってます。夢を語る事と決断することを最後までやり続けるポジションが演出家だと思うから、舞台監督とか制作さんにやりたいと思ったら一応言うだけ言ってみるんです。

望月楽しそうだなぁ! 生き物感というかライブ感がやっぱり凄いですね、舞台って! 私はそういうセッションというか、アシスタントさんが提案してくれたものを「あぁ! それ良いねやろう!」みたいな感じで取り入れる事はあるんですけど、そういうライブ感は舞台よりは少ないと思うんです。でもメディアミックスして頂いた事によって、板村監督だったり山崎さんだったり色んな方の解釈で作られた自分の作品を見れるのがすごく楽しくて。「あ! このキャラクターって想像よりもこういう声だったんだ。じゃあもっとこういう部分があるのかもしれない」とか、「ヴァニタスってこうなんだ!」「ノエってこういう部分もあるんだ!」っていう刺激をアニメからも舞台からも沢山いただいたので、今後も漫画作りに活かさせて頂きたいです。

演劇でしかできない
『ヴァニタスの手記』

山崎3月に再演と言いますか、アンコール上演という形でまた上演されますが、『ヴァニタスの手記』は、とにかく人間ドラマが人物ごとにあったので実際に人が演じる演劇として面白くなるというのを確信して作り始めました。ただ同時に、ネーニアとかプレダトゥールとかっていう化け物みたいなヤツらは演劇でどうしろというんだ? ってのは最初に思って(笑)。色んなパターンを考えてたら、辻本(知彦)さんっていうヘンテコで刺激的なダンス踊る方と知り合って。これ辻本さんだったら面白くしてくれそうだなと思ってオファーをしたら「やりましょう!」って言ってくださって。で、ああなりました(笑)。

望月いやぁー、ネーニアが出てきた瞬間もう「フゥ~~!!」ってなりましたよ。

山崎「フゥ~~!!」って(笑)。

望月一幕が終わって休憩時間に外に出て、アシスタントさんと、「ネーニア良かったよね!」「ああくると思わなかったよね!」って盛り上がって。最近だとプロジェクションマッピングで異能の力とかも好きに表現出来るじゃないですか。ああいう感じでくるものだと思っていたので、というかそもそも異形のキャラクターを人が表現すると予想していなかったので、凄いパンチ喰らったっていうか、「舞台ってすげぇ……!!!」と思いました。

山崎稽古の段階でも試行錯誤を繰り返しながら、どうなるだろうって想像しながらやっていましたね。原作の先生がメディアミックスでの刺激を面白がってくれていて、「好きに作ってください」って言っていただけたからこそ、アニメでも実写映画化でも絶対に出来ない、演劇でしかできない『ヴァニタスの手記』が出来ました。ただ変な動きをしていれば良い訳じゃなく、ちゃんとネーニアの動機や行動原理を見つけて動かなくちゃいけなくて。人じゃないキャラの動機ってどうやって見つけるんだろうとかって一瞬思うんですけど、物語上に存在している以上必ずあるはずだし、それを探す作業を役者さんも楽しみながらやってくれたのがすごく良かったです。

望月ネーニアほんとに凄かったなぁ…。やっぱり舞台でしか出来ないネーニアだったっていうのが衝撃です。人が演じることによって生々しさやおどろおどろしさがより際立っていて。無邪気な悪っていうのを動きと声で見事に表現されていて終始楽しそうで、一周回って怖いより可愛いなぁって思いながら観ていました。でも、ルイの首が落ちる所はすごくゾクッとしました。あそこのルイの後ろからネーニア3人がだんだんのしかかってくるところが「いやぁー、やべぇー、気持ち悪い、怖い、好き」ってなりました。

山崎アニメの動きや原作のカットを皆で見ながら「ここの身体は使えるよね」っていうネーニアが持っている身体性を掴んでいって。あれって振り付けがあるっていうよりも、色んなパーツを俳優に渡して、あとはそこで皆さんが自由に自分の意志で動かないとただのダンスになっちゃうから。で、タネを渡して使えるものをジャッジしてくんですけど、やっぱり能動的に動いて下さいって言った時に見せる辻本さんの「例えばー」って言う時の動きが、もう最高で。「トン・トン・トン」だと人間が予想できる「1・2・3」になるから、それだと人間が動いてることになるから「トン・トン・ウ・トン」ってちょっとずらして人間の感覚を変えてみるとか。

望月ずらす気持ち悪さみたいな。

山崎そうですそうです。セリフとかには残っていないし、振りもあるようでないので、その感覚を取り戻すところからたぶん再演の稽古は始まると思います。他にも満を持して演じる菊池(修司)くんのノエとか、あとは丘山(晴己)くんのローランとか。「ローランがローラン以上にローランだった!」っていう感想を、まさかの原作者から頂きましたからね(笑)。

望月はい(笑)。私負けてんなぁって思いましたね(笑)もっとやらなきゃなローランって(笑)。

山崎いやいや望月さんが描いたキャラクターですから(笑)! 

望月そういう刺激を頂けるのはやっぱり嬉しいので、改めて楽しみです。

山崎是非是非楽しみにしていて下さい。

「喋っているキャラクター以外もちゃんと動かせ」

山崎悪い芝居の前作『ラスト・ナイト・エンド・デイドリーム・モンスター』はどうでしたか?

望月えー! なんだろう! ほんとにスピード感が半端なくて1秒でも目を離したら振り落とされちゃうって集中して、終わってどっと疲れる感じの、なんですかね、ジェットコースターっていう感想が1番なんですけど。個人的には今村さんの演じた役が、足が悪いのは実際にそうなのかもしれないけど、この子が抱えた傷の表現なんだろうなっていう解釈で観ていて、最後カーテンコールが終わって松葉杖を舞台に置いていった時に、こっちもすごく救われて。こんなに辛いことがあったけど自分で色々区切りをつけて、少しは軽くなれたんだなっていう安心感と満足感をもらえたというか。

山崎演劇の好きなところのひとつに一緒に体験をするところってのがあって。で、劇場入って出た時に見える世界が何か少し変わっていればいいなと思っていて。Twitter上とかでも良いので、お客さんが感想を発信してくれたりした時に「あぁ、作っていて良かったなぁ。」って思いますね。テーマやメッセージなどが伝わることより、観た人の中でなにかが少し動いて、そのことを誰かに伝えたいって体験をしてほしい。それがまさに僕が好きな観劇体験ですね。

望月私も読者さんの感情を動かせたら勝ちって思っているところがあるかもしれません。何も感想はないって言われるのが読んでもらえないよりもキツイので。「嫌だったな」とか、「怒りを感じた」とか、「悲しかった」とか、勿論「面白かった」と言ってもらえるのが1番嬉しいんですが、その人の感情を少しでも動かせたのなら、描いてよかったなって思う時はありますね。そういう感想ってその方の人生が土台にあって、その方の中だけで生まれる唯一無二のものじゃないですか。

山崎物語の展開とかが思ってたのと違うとしても「何故こうなったんだろう」と思いを巡らせてもらえると嬉しいですよね。フィクションだから実際には存在しないんだけど、ほんとうに存在しているかのように観た人の中で思いを巡らせてもらえる時に、物語を届けた喜びがあります。色んな想像をすることって、普段生きていても誰かを思うことと近いですもんね。

望月舞台を観ていると、目が足りないっていう感想が1番に出てきます。画面の中に収まっている映画やアニメと違って、カメラが向いてないところでも人が動いているから、どこを観ようって悩めるのも舞台の楽しさだなぁと思いました。同じ舞台を生で2回っていう経験がないんですが、何回も観に行く人の気持ちが分かってきました。

山崎漫画でコマの中に写り込んでないところも頭の中に浮かべながら描かれてるとは思うんですけど、切り取るときは頭の中にどんな絵が浮かんでいるんですか?

望月漫画の場合は、能動的な動作を読者さんに求める媒体なので、いかにページを捲ってもらうかという計算は必要で。

山崎はい。

望月視線誘導を意識しつつ、見開きにおいて一番見せたい絵はどこなのかを決めてメリハリをつけるようにしています。枠線の外ってなると私はキャラの立ち位置を意識するくらいですかね。

山崎なるほど。

望月新人時代に担当さんから「喋っているキャラクター以外もちゃんと動かせ」と教わり、それは今でも実践しています。喋っているキャラクターの脇で他のキャラが何をしてるかによって、伝えられる情報の量がグンッと増えるので。なので読者さんにそういう細かい部分を気付いて貰えた時はすごく嬉しいです。

テーマ〝逃げる〟

山崎次回公演が『逃避奇行クラブ』という〝逃げる〟をテーマにした作品なんですが、望月さんは逃げ出したくなる時とか「もうやだー!」ってなる時とかってどんな風にしてらっしゃいますか?

望月実際に逃げてます(笑)。私は本当に気分転換が下手な人間でして、趣味を仕事にしてしまったので、仕事で結構キツくなっちゃった時に、絵とかアニメとか漫画を読むことで解消できなくなっちゃうんですよね。

山崎うんうん。

望月それに、どこにいても妄想は出来てしまうので。職場にいる限りずっとお仕事モードになるし、エンタメに触れても色々と考えてしまうので、脳みそから仕事のことを放り出すのがすごく苦手で……。最終的にどうするかというと、私は海外に逃げます!

山崎ははは(笑)!

望月私の唯一の有効な気分転換方法は海外に逃げることです!

山崎海外旅行って事ですね。

望月「国外逃亡します」っていう話は友人にもよくするんですけど。日本語が何もない場所に行くと安心するんですよね。

山崎うんうん。

望月日本にいるとどうしても文字にしても音にしても情報量が多くて。

山崎はい。

望月だから国内旅行よりも海外の方が、日本語が減る分自動で入ってくる情報量が少なくて解放感があるんですよね。

山崎なるほど。

望月お仕事のことを完全に切り離すのは無理ですよ。無理だけど、海外にいるとネガティブな方向にはなりづらいというか、その日一日を過ごすのに全力になるので悩むヒマもあまり無いというか。で、10日くらい経つと「あ! 漫画描きたいかも」って気持ちになってきます。

山崎また描きたいって気持ちを復活させてもらうんですね。

望月はい。全身デトックスをして、「よーし、戻るかぁ!」って帰ってくる感じですね。

山崎いいですねぇ。今後とも仲良くしてもらえればなと改めて思いました。ので、よろしくお願いします。

望月是非仲良くして下さい。また舞台を観に行って、ぴょんぴょんしながら感想をお伝えすると思いますけど、見限らないでください(笑)!

山崎もちろんです(笑)!


望月淳(もちづきじゅん)

神奈川県出身の漫画家。2004年に『パンドラハーツ』(月刊「Gファンタジー」)にてデビュー。初の連載となる『Crimson-Shell』、TVアニメ化もされた『PandoraHearts』を同誌にて連載の後、現在は月刊「ガンガンJOKER」にて『ヴァニタスの手記』を連載中。